合格ノウハウ 1級建築士製図試験について|注文住宅なら岡山県岡山市にある綜合設計へお任せください。
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2021.12.27
こんにちは!綜合設計の井上でございます。
今回は表題にもある通り1級建築士製図試験の合格ノウハウについての記事となります。
学科対策の記事はこちらになります。
私が製図試験を2度失敗しているので製図の記事を書くのに期間があいておりますが、
私の経験した令和1~3年度の製図試験を基に解説していきたいと思います。
①一般学習論
②過去問研究について
この2つについて主に解説していきます。基本的には1級建築士試験の内容になりますが、2級建築士試験でも応用できる部分もあるかと思います。
①一般学習論
ここでは学習全般にわたる内容を解説していきます。
まず、学習時間ですが資格学校のカリキュラムベースでいくと、製図試験の合格には最低でも30枚の製図が必要と言われています。
この30枚という数値は1年目の人でも必要な最低ラインですので、書く人はもっと書きます。
私の場合ですと、1年目45枚(8~10月:2か月弱)、2年目100枚(10月~10月:1年)、3年目75(うち長期課題40枚)枚(1月~10月:10カ月)を書きました。大体1枚書くのに6時間くらいかかるので、3年トータルで1320時間以上はかかっていると思います。
ピンとこないと思いますが、もし初受験の2か月で1320時間とろうと思うと(1320÷60日=22時間)1日22時間は勉強しないといけないので、1年目の初受験の方が私と同じレベルで受験することは不可能かと思います。
このように、1級建築士製図試験は、受けている回数によって圧倒的に積み上げてきている練習量が違うということを認識してください。それでも2か月で合格する人もいると考えると、60日x6時間=360~400時間は最低でも確保しないと厳しいと思います。
ただ、1300時間かけて受かる人がいる中で400時間で受かれたら、十分すごいことなので、何とか初受験合格を目指すのであれば、2か月6時間は必ず確保した方が良いと思います。その為には何が必要か(学業や仕事の調整等)を早い内に準備しておくことをお勧めします。
私は周りの受験者と比べても作図枚数は多い方でしたので、結論としては製図試験に必要な勉強時間は400~1300時間程度と考えられます。
次に、勉強方法ですが、主に①通学(N,S)、②独学の2パターンが考えられますが。こちらは圧倒的に①の通学が有利です。
初期投資を渋って独学を選ばれる方が稀にいますが、学科は独学でいけても製図はかなり厳しいと思います。理由は2つあります。
一番大きな理由は、課題の量です。独学者では圧倒的に課題が手に入る量が少ないです。市販で売られている課題で合計しても恐らく10課題くらいのパターンしか練習出来ないので、通学者と比べて引き出しが少なくなります。
そして試験当日は、その引き出しの多さで合否が決まると言っても過言ではありません。当日の試験は必ずと言っていいほど、誰も勉強していなかったような内容が問われます。しかし、ドンピシャな内容でなくとも、通学者は似たような内容を応用することで、勉強していない内容も何とか食らいつくことができますが、独学の方だとお手上げ状態で降参しているのをよく見ます。
2つ目の理由としては、通学者が圧倒的多数を占めていることが挙げられます。
1級建築士の製図試験では、ほぼ毎年「赤信号みんなで渡れば怖くない現象」が起きます。
これは何かというと、実務上や一般概念上はアウトだと思われる内容でも、ほとんどの受験者がそれをやれば、その内容で失格にしてしまうと、合格率が極端に下がるため、不問になるというものです。その為、自分を「みんな」の中に属している方が、受かりやすくなります。
ただ、ここまでは一般的に理解しやすい内容かと思いますが、3年間私が受験してみて感じたことを踏まえると、通学のメリットは「赤信号みんなで渡れば怖くない現象」だけではありません。この現象はアウトをセーフにする現象ですが、そもそもが通学すれば合格のストライクゾーンが広くなります。それを解説していきます。
まず、一級建築士製図試験は現在合格率が35%程度の狭き門です。
私が合格した令和3年は学科+製図が9%代と超難関資格と言っていいレベルとなっています。上位35%しか合格しないということは、合格する人はエリートのイメージを持つかもしれませんが、そうではありません。
なぜなら、この試験は誰もが羨むような良い設計をした人から上位35%が受かる試験ではなく、「約35%がしたプランに似ているものから受かる」試験と私は考えております。言い換えれば一番合格しやすいのはみんなと同じプランをしている人=平均的なプランをしていて、かつ書き漏れ等の減点が少ない人から受かります。その為、誰もが驚くようなプランをする必要がないどころか、そんなプランをしたら不合格に近づいていきます。
実はこの試験の本当に難しいところはここにあります。実際に私の例で説明すると、初年度受験ランクⅡ(3%)でした。
出来としては絶対に落ちたと思い、受験の次の日からは来年の受験に向けてすでに勉強を始めるほど、出来が悪いと感じていました。
しかし蓋をあければランクⅡで、これなら次の年に自分の実力を発揮できれば十分受かるなと思いました。
そして、当日までに100枚製図し、万全の状態で臨みました。自分の出来としても絶対に受かったと思えるような出来でしたが、結果はランクⅢでした。
今となってはわかるのですが、初年度でランクⅡ(合格まであと一歩)までいっていた私が、丸1年かけて100枚も練習すると、エスキース時間も1時間、作図に関しては2時間を切るくらいになっていました。
そうなると、余った時間で「あれやこれや」と要求されていないレベルのことまでやるようになります。
これが合格を難しくする原因です。試験元はあくまで平均的なレベルのプランで減点が少ないものを求めているのにも関わらず、さも「俺知っているぜ」的に色々な知識をひけらかすような図面を書いてしまうと、試験元が求める平均的なプランからはかけはなれていきます。
これは勉強した人ほど陥りやすいジレンマです。
製図突破に10年以上かかる人もいますが、その中にはこのようにレベルが高すぎて35%の多数派グループに入れない人もいるのではないでしょうか。
実際、私も2年目3年目では資格学校の講師からは、7割程度の力で問題を解くようにと言われ続けました。これが中々難しい。
模試などでは「このくらいが平均くらいのプランかな」とあえて、あまり考えすぎないプランを作ったりしてA判定をもらっていましたが、
当日はそんな余裕がないので、ちょっとでも他より差をつけようと知識をひけらかそうとします。
これが一番の不合格の元です。プランはあくまで普通でいいんです!
その代わり減点を減らすように何度もチェックをすることが大事です。抜け駆けしようとしないこと。
あくまで「みんなで渡る」というのがこの試験の勝ち方です。
話が長くなりましたが、要は独学していると自分がどのくらいのレベルなのかわからないのです。
当日の出来が良くても、「良すぎて落ちる=試験元が求めてないことをする」で落ちている可能性もあります。
普通なプランを目指すためには、自分が普通なのか普通じゃないのかを知れる環境を作ることが大事だと思っております。
あとは定番なところで行くと、資格学校はNが良いのかSが良いのか?ですよね。
学科編でもまとめましたが、そこに大きな差はありません。しかしながら、県によってはNが良かったり、Sが良かったり差が結構あります。
それは良い講師がいる県の資格学校は面白いくらいに合格率が高かったりします。
その為、金額云々ではなく、県別の合格率などを見て(営業マンに教えてもらって)自分の県の実績が高い方を選ぶというものも一種の手ではないかと思います。ちなみに私が受けた岡山県の令和3年ではNの方が圧倒的に勝っている印象です。
(令和2年は五分五分だったと思います。)
②過去問研究
次に過去問研究について私の経験を話します。まず、資格学校の長期コースの人はさんざん過去問研究しているかと思いますが、ほとんどの人が意味のない過去問研究をしていると私は思っています。
大前提として、試験の採点表を作っているのは試験元で、試験元はいつも前年の標準解答例にヒントをいくつも残しています。
その意味をきちんと理解せずに、これをやったらアウト・セーフなどと極端に判断している人が多いように感じます。
令和元年 屋上庭園のある美術館の分館
この時は、予め屋上庭園のあると試験元が明示しておりました。
試験の内容としては特段変わったところはなく、あえて言うなら縦長敷地が久しぶりに出たというくらいでした。
その時の合格のポイントがこちら。
ここにはっきり書いてあります。「延焼の恐れがある部分の位置」、「吹き抜けの防火区画」。これらが明確に明示されているので、
次の年からは資格学校の採点表で延焼ラインのミスは失格と判定されるようになりました。
しかし、この時は延焼ラインの書き漏れが非常に多く、その際に「建物に掛かっていない延焼ラインは記入しなくてもセーフ」という都市伝説が流れました。その根拠は、試験元の標準解答例が建物に掛かっていない延焼ラインを省略明示したことと、延焼ラインの書き漏れで受かっている人もいるからです。しかし、それで受かるのはごく少数派です。ごく少数派のことを当てにして安心しているようではダメです。
延焼ライン漏れで受かっている人は、課題的にセーフではなく、単に採点者が見落としただけのセーフかもしれません。また、大幅に減点されているが、ほかの減点がなかったため、奇跡的に受かったという可能性も高いです。
いずれにせよ、ここに書かれている内容をミスして受かる可能性は0に近い。ただし、稀に受かる人もいるというだけです。
また、この年は、屋上庭園を500mm以上のスラブ下げを要求されました。
資格学校では200-300mmのスラブ下げは練習していましたが、500mmは全く練習していなかったため、初受験者のほとんどが庭園のスラブをミスしました。
しかし、前年度を受けている人は、前年度の課題がプールだったことから、プールの水深確保と同じ要領で庭園をつくれたので、難なくこなせました。その結果、ネット上では、事前に発表されていた庭園をミスしている人は100%落ちると言われていましたが、蓋をあければ初受験者のほとんどが出来ていなかったため、「赤信号みんなで渡れば怖くない現象」が発動し、庭園に対して何らかの処理をしてさえすれば、失格とはならず減点で済みました。
このように、試験元は過年度生が有利になるポイントを作っています。
その為、過去問研究をしていないと初受験者は不利なところからスタートになります。
しかし、不利ではあるが、失格要件には中々ならないというのも事実です。だからみんな過去問研究をないがしろにして油断するのだと思います。
令和2年 高齢者介護施設
この年は資格学校Nがドンピシャで当てた(模擬試験と同じようなプランをかけば納まる)年で、圧倒的にN生有利とされていましたが、蓋をあければSとそこまで明確に合否に差がでたわけではありません。
もちろん当日のエスキースにかかる時間は圧倒的にN生が早かった印象ですが、そのアドバンテージをそのまま合否に活かせるほとではなかったと言えます。
この時の合否のポイントはこちら
今回のポイントも特段珍しいポイントはないのですが、前年と同じように「延焼ライン・防火設備」に加え、「ゾーニング」、「道路斜線」がポイントとなっています。道路斜線はこの年は、久しぶりに4m幅員の狭小道路が出題されたため、斜線がポイントとなりました。
また、初出題で「その他適切な室を設けること」とあり、自分で適切な室を何かしら作っていないと要求室の欠落でランクⅢに該当してしまうというものでした。
一部の受験者は、例年通り課題の一番下に書いてある「その他必要な室を適宜設けること」と同じと解釈し、なくても問題ないか小減点で済むと考えた人も多かったです。その結果、その項目が足切りとなりました。
ちょっとした文言の違いですが、大きく意味が違うので、来年からはよく問題文を読むようにとの試験元からのヒントだと思います。
道路斜線についてはほとんどの受験生が対策をしていたかと思いますが、低層建物だったので、それほど注意していなかったようにも感じました。
しかし、実際は翌年度に活かせるような「車寄せ庇からのセットバック算定」等重要なポイントが多くあります。
特に、車寄せの庇を道路境界から1mのところで設置している人も多くいました。
それについて、延焼ラインが車寄せにかかった際の処理について心配している受験者がいましたが、私としては、庇が境界から1mであれば、建物の斜線制限のセットバックが庇からになるので、斜線に当たっているのでは?と感じました。
要は、受験生の中には、自分が気づいていない大きなミスをしている人も多いということです。
ランクⅢの人は大概、1つ大きなミスをしているというよりか、3つ以上大きなミスをしているが気づけていないという印象です。
もしランクⅢになってしまった方は、きちんと自分の図面と標準解答例を見比べて大きなミスが3つないか確かめてみてください。
「これをしたからランクⅢになった。」とよく言いますが、ランクⅢはいわゆる足切り失格なので、1つのミスではランクⅢにはならないと思います。
あと、資格学校の教え方を拡大解釈している人も多かったです。
これは標準解答例のスタッフルームです。
20m2程度の室をL型にするという、資格学校の教えでは減点されるようなプランです。
しかしL形にした理由は、明らかにスタッフルームに採光を取りたかったからだと思います。
その他の法的採光がいらない事務室系用途であっても、標準解答例では無理やりにでも採光を確保していました。
資格学校では「法的採光がいらない室は非常用照明があればよいから最悪無窓でもいいよ。」と教わります。
これを拡大解釈して、「どんな場合でも事務系用途は無窓にしても減点はできない」としている受験生が多いです。
これは過去問研究が甘いと言えます。過去に事務系用途無採光でも合格者は多数いますが、近年の標準解答例を見ると、小空間の場合は室の整形よりも採光を重視する傾向があります。
特に、資格学校の採点表では事務系用途の無窓は減点がないですが、あくまで本試験では試験元が全てなので、その採点表は全くあてにならず、過去問研究の方が重要です。
そのため、はなから無窓で計画している人は、ハンデ付で試験を戦う羽目になるので、合格するのがシビアになってきます。
また、標準解答例からの抜粋ですが、この時は西側の4m道路は使用していないことがわかります。
従来であれば、資格学校では「道路が2つある場合は、2つとも使わないと敷地条件の有効利用が出来ていないため、大減点」と教わっていたはずです。
しかしながら、西側道路は歩道がなく、また幼稚園が隣接していることから危険性が高い道路となっています。
無理に西側にアプローチを計画する方が危険でした。
これは通用口と管理廊下を表しています。
この試験では、廊下の有効はW1.8m確保となっていました。
その為受験者は「バックヤードも有効1.8m確保派」と「利用者ゾーンのみ有効確保派」と別れました。
そしてネットでは、バックヤードの有効確保をしていない人は100%落ちると言われておりましたが、蓋をあければ、標準解答例も1.8m確保していませんでした。(スケールを当てるとW1.5mほど)
この場合は、標準解答例でそうなっているので、減点はないですが、もしかするとここでも「赤信号みんなで渡れば怖くない現象」が発動し、廊下のミスは不問とし急遽標準解答例のプラン変更した可能性もあります。
令和3年 集合住宅
今年の課題です。私が合格した年でもあるのですが、合格したとはいえ紙一重だったなと感じております。
試験終了後は自分ではミスも少なくそこそこできた印象でしたが、標準解答例を見るとギリギリ拾われたなという印象でした。
そう思った部分を解説していきます。
まず、今回の試験で大きなポイントだったのが、「道路斜線の適合確認情報」の漏れが失格要件であることが挙げられます。
恐らく受験者のほとんどは、斜線の違反は一発失格を覚悟したとは思いますが、記入漏れは減点で済むと思っていたはずです。
ではこれがなぜこんなに厳しくなっているのかは、理由は2つあります。
1つは斜線抵触がほとんどいなかったので、人数調整するためには、記入漏れを失格にする必要があった。
これが一級建築士試験の怖いところです。例年の傾向でいくと減点で済むような内容が、受験者の出来によって一発退場になる可能性があるからです。
しかしきちんとチェック時間をとれていれば漏れることがない部分でもあるので、タイルの目地を書く前にこちらを優先する必要があったと言えます。
もう1つはやはり過去問研究をしているかどうかです。
前年も道路斜線については問われていましたし、合否のポイントではっきりと書かれていました。
逆に令和元年では斜線は失格ポイントとしては明記されていないんですよね。
ここでしっかり過去問研究をしたかどうかが問われています。
令和2年では低層だったためたまたま斜線に当たらなかったので、油断している人とここは来年も出る可能性があるからしっかり注意しておかなければと思った人を分ける意図があります。
1年かけて注意してきた人は、絶対に外すことはない項目ですから、ここで過去問研究をしているかがわかるわけです。
また、斜線の関係でいえば、斜線の後退距離は庇から算定していました。
資格学校では「道路間口の1/5以下の庇は斜線に影響しない派」と「玄関ポーチの庇以外は、斜線のセットバックに影響する派」が分かれ、ネットでもその判定は分かれました。
結果としては庇から算定する方が正解となりました。
その為、資格学校の言うことを鵜呑みにして庇のセットバック影響を無視した人は減点からスタートすることとなりました。
しかし、これも前年に車寄せの庇が出た時にしっかりと検証していれば、例え資格学校から「道路間口の1/5以下の庇は斜線に影響しない派」と教わっていたとしても回避することは出来たと思います。
実際私も、「道路間口の1/5以下の庇は斜線に影響しない派」として教わっていましたが、当日の試験は「これは危ないな」と感じ、持ち出しの庇は使用せず、出入り口を壁面より後退させることで上階の床で庇を作って対処しました。
ただし、ここでも「赤信号みんなで渡れば怖くない現象」が発動し、致命傷になるような減点ではなかったようです。
ただしここでもし、資格学校の言う通りにして致命傷になったとしても、資格学校は「それでも受かっている人いるから」としか言われず、何の責任も取ってくれません。
本当に合格したいなら合否は自己責任という意識をはっきり持つことが何より大事です。
その他には、試験では駐輪場を異種用途区画しておりました。
同一管理用途であれば異種用途区画は必要ないとの見解もありますが、今回の試験ではより安全側で駐輪場にも区画する必要があったと思われます。
試験終了後に「やっべー駐輪場に防火区画するの忘れたー」「駐車場はいるけど、駐輪場はいらないから大丈夫だよ」このような会話が聞こえてきましたが、結果的に防火区画出来てない人は減点があったと思われます
。今回は減点ですが、来年以降は失格項目になる可能性もあります。
また、標準解答例では歩道付きの東側からアプローチをとり、西側は補助的に活用するプランを出しました。
これもネット上では、西側アプローチをとった人は大減点になるとの予想でしたが、実際は西側アプローチの方が合格率が高い結果となりました。
標準解答例では2案とも東からアプローチなのに、なぜでしょうか?
これを素直に東・西どちらでもよかったんだと思える人は、不合格します。
標準解答例が2案とも西側アプローチにしていないということは、西側アプローチは間違いなく減点されています。
また、もし西側アプローチが8割を超えているのであれば、「赤信号みんなで渡れば怖くない現象」が発動し、不問になるとは思いますが、東アプローチが6割もいるのであれば、西側アプローチは少数派なので、不合格に一気に近づきます。冒頭に伝えたようにこの試験は、プランの良しあしより多数派に入ることが合格の前提条件だからです。
では、なぜ西側のアプローチの方が合格率が高いのでしょうか?
それは、今回の試験は東側アプローチにすることで急激にプランニングが難しくなる課題だからです。
そのため、アプローチは東側からとったものの、その他の建物としての計画が西側アプローチの人よりもボロボロになった可能性が高いです。
逆に西側アプローチにしてしまえば、ゾーニングやプランニングがかなり綺麗にまとまるので、その辺りで相殺されていると思います。
もし、東側アプローチでプランも綺麗にまとめた人は、間違いなく上位合格しているでしょうし、西側アプローチでの合格者は減点スタートだと思います。
私自身も西側アプローチだったので、危なかったなと思っております。
他にはこの辺りが資格学校の教育とは解釈が分かれるところです。
資格学校では廊下はまっすぐ通せ、もし曲げるのでもクランク1回まで。と教わります。
今回の基準階ではこの例のようにI形にまとめるのが一番簡単ですが、そうなると廊下をまっすぐ通して、無駄な空間を作るか、無駄な空間を減らす代わりに廊下をクランクさせるかに選択支が分かれます。
試験元的にはクランクより、床面積の無駄な空間の方が悪いと判断しています。その為、来年以降無駄なホール空間を適宜室で埋めていない解答は減点スタートすることになります。
私は、収益性よりも避難安全性の方が優先度が高いとして、階段前に無駄な空間を作る代わりに廊下をまっすぐ通しましたが、恐らく減点されていることでしょう。
これもネット上では議論になりました。
屋上庭園と共用室の北側配置です。
庭園と共用室という用途上北側配置の方は減点されると言われておりましたが、標準解答例としては北側でした。
その代わり住戸を全て南に配置しております。
ただし、この結果から来年からは北側に庭園や共用室を持っていっても良いと判断する人は不合格です。
今回の住戸Cは賃貸の単身想定です。賃貸の単身者は日中建物内にいることがほとんどないため、リビング的に使用する共用室が一番使われるのは夜間となります。
夜間利用が多い室であれば北側でも問題ないと判断できますし、それに隣接する庭園も北側でも問題ないと考えられます。
また、3階以降は3LDKのファミリー層向けなので、任意室にトランクルームを計画するのはOKですが、単身者にトランクルームはあまり必要でないため、2階はワークスペースが作られています。
このように、要求されている建物に対して柔軟に対応しなければならず、安易に「任意室設けたOK、共用室北側でもOK」などと考えないようにしてください。
他に議論になったのは、在宅ワークスペースを個室として作った人は3LDK→4LDKになって、要求違反・失格という議論です。
これは普通に考えれば、スペースを要求されているので、リビングの一角に作るべきで、ミスした人はランクⅢを覚悟してよいですが、ここでも「赤信号みんなで渡れば怖くない現象」が発動し、減点で済んでいるようです。
また、過去問をしっかり研究していれば、R1の屋上庭園の課題から、今回の屋上庭園の記述や配置などがかなり楽になったと思います。
これまで解説した内容ははっきり言って、ランクⅢ、Ⅳを回避するためのものです。
ランクⅡは減点争いになるため、上記のことに加えて、チェックを3~4回するための作図スピードも必要となります。
また私が受験して、他の生徒さんを見ていると、ほとんどの人が記述の復元や採点をしていませんでした
。図面の採点のポイントで書かれている内容は、記述に書かされる内容とリンクしていることがわかります。
資格学校の採点システムでは図面60点、記述40点など、完璧に別個で採点されているかと思いますが、そうとは限りません。
図面と記述で併せて100点だと私は考えています。端的に言うと、記述で-2点になれば図面でも-2点となり、ダブルパンチを食らう可能性があるということです。
そうなってくると、今まで別個で採点していると考えていて図面60点満点で記述が20点と甘く見ていた人は、実は図面40点(記述ダブルパンチ-20)+記述20点=60点不合格のパターンもあるということです。
たまに聞く、記述が完璧で図面が悪くても受かるという人がいるのは、ダブルパンチが少ないからではないかと思っております。
その為、必ず記述対策怠ることなくした方が良いです。
私の場合ですと、記述対策として、書店に並んでいる集合住宅関係の本は全て今年読破しました。それくらい記述は大切だと考えています。
また、配置計画も受験者の方は甘く見ている人が多いです。
余ったスペースは植栽やテラスで埋めれば良いと考えているのだと思いますが、採点のポイントとして配置計画と明確に描いているため、敷地に無駄なスペースがあるとランクⅢになる可能性が高いです。
大きな減点がないのに、毎年ランクⅢの方は配置計画が悪い可能性もあります。
上記のように標準解答例は非常に配置計画がうまいです。
最後に・・・
ここまで長々とお付き合いいただいた方は、それなりにご興味ある内容だったのかなと思いますが、
良く受験者の中には「なんで落ちたのかわからない」、「自分より出来の悪い人が受かっている」という不合格者の意見を聞きます。
そういった方々の大半は標準解答例で過去問研究をしていないのではないでしょうか?なんで落ちたのかわからないと言っていい人はランクⅡの人だけです。ランクⅢ以降の人は明確に悪い点がいくつもあるはずです。
あくまで資格学校の採点表で点数が高いとか、自分の今までの練習通りでやれているから問題ないと思っていませんか。
実は毎年採点基準は変わっていて、重要視されるポイントも違います。また、模試では学校で指摘されていなくても、
本試験で同じことをやると学校は指摘することも多いです。
あくまで学校は相対評価が出来るため、他の生徒より出来ていれば大きな指摘はしないこともあります。しかし完璧なわけではないです。自分の目でしっかり復習することが合格への近道だと思います。
(実際私も普段の課題や模試では2室採光を使用しておりましたが、本試験の資格学校の採点では「採光は出来るけど通風は出来ないので減点-5」といったようにいきなり普段学校が問題ないと教えていたことですら減点されました。
その他にも400m2以上の要求室は整形を作るのが難しいから、いくつかのブロックで整形の室を作り、ゾーニング全体としては整形ではなくても良いと教わりましたが、本試験では「大空間の不整形-5、下手すりゃ足切り」と言われました。
要は学校側も何が減点されるかわからないから、適当なイチャモンで減点されます。本試験とはそういうものです。)
だから学校の採点シートで一喜一憂せず、本試験元のヒントをいかに自己学習するかがポイントだと思います。
私も仕事場の目につく場所に過去の復元図と標準解答例を貼り付けて、毎日見ています。
そうすることで来年は同じミスはしないぞ。という気持ちになりますし、試験元の解釈と資格学校の解釈が違うことに気づけます。
今年不合格だった方も、学校で言われたことだけをやるのではなく、自分で研究してみてください。試験元はヒントを多く出しています。
来年は良い結果が出ることを信じております。