外壁赤外線点検について|注文住宅なら岡山県岡山市にある綜合設計へお任せください。
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その他
2024.07.03
こんにちは!綜合設計の井上でございます。
先日、外壁の赤外線点検について問い合わせがあったのでまとめてみようと思います。
「赤外線診断って精度も含めていまいち分からないんですけど、どうなんですか?」
こんな質問をいただきました。
まず、外壁の赤外線劣化診断は、外壁材の劣化により材料が剥落し人身事故を起こす可能性がある部材に対して行います。
その為剥落危険がないものや、剥落しても事故にならないものには基本的には不要です。
もちろん単純な劣化診断であれば防水性能の劣化等の診断は意味がありますが、赤外線診断に関してはその部分は重要ではありません。
では、そのような剥落危険性がある材料の診断方法には①打診調査②赤外線調査の2種類があります。
①は専門の打診棒とよばれる器具で外壁を触診することで劣化部位を判断するものになります。
②は赤外線カメラを使って温度変化を確認し、劣化部位を判断するものになります。
①と②はどちらもきちんと調査をしていれば精度的には変わらないと言われています。ただしどちらも完ぺきではありません。
よく「赤外線カメラは劣化が写らないから、直接全面打診をしてほしい」という注文をうけます。
これは赤外線カメラが打診よりも精度が低いと感じている人の発言ですが、そんなことはないと思います。
その印象を受けたのであれば恐らく赤外線調査に何らかの問題や間違いがあった可能性が高いです。
まずどちらの調査も完ぺきではない理由は、どちらも調査にアナログな部分が発生しており、診断者によって結果が左右されます。
打診調査の場合は、劣化部位を触診し、音の違いで劣化部を判断します。その為、聴力の違いで診断結果に差が出ます。
聴力が良い人であれば、ほとんど同じ音をしていても微妙な違いに気づいて小規模な劣化も判別できます。
大きな劣化については素人でもわかるくらいの音の違いがあるので、ほとんどの人は間違いませんが、小規模なものは差が出るので、
設計時点と工事時点で劣化数量に差が出たりするのはその辺りが影響します。
また、同じ理由で年配の方の調査は聴力の衰えが結果に反映される一方で、
若者だと音の違いは聞き取れていても経験不足で聞き逃しているケースもあり、ジレンマが発生します。
ポイント:【打診調査は調査者の聴力に診断結果が影響する】
一方で赤外線カメラによる調査ですが、こちらは同じ性能のカメラを使用して撮影すれば、だれが撮影しても同じ結果がでます。
そのため打診調査よりも調査の再現性は高く、信頼できます。
しかし赤外線カメラの調査の場合は、撮影して終わりというわけではなく、その後写真データの解析をしなければいけません。
大雑把にいうと、写真を拡大してみたり、写真に写っている空などの温度を対象から外したり、影などで出来る温度差を精査します。
ここの分析の部分は、分析ソフトに写真をいれたら自動で解析してくれるわけではなく、
一枚一枚分析者が手作業で写真の劣化判断をしていくことになります。
その為、分析者の経験値や性格によって診断結果に差が出ます。
また、当然に性能の良いカメラと悪いカメラでは画質に差がでます。機器の進歩は目覚しく、古い機器を使用していると、
新機種と比べて精度は落ちます。その為、前回調査では劣化がみつかったのに、次に調査したら劣化が映らなかった、
なんてことはカメラの精度によって全然あり得ます。
ポイント【赤外線調査は分析者やカメラの性能に結果が左右される】
以上のような理由から①と②のどちらの調査も完ぺきではなく、常に変動した結果が出てしまいます。
これは現段階の技術ではある程度理解していないといけません。
次に2種類の診断方法のメリットデメリットです。
打診調査:メリット:触診するので小規模(3cm)角くらいの劣化部位も見付けれる。
デメリット:手の届く範囲しかできないので、2階以上の建物では足場(作業車)の設置が必要となり費用が高額になる。
現地での調査に時間がかかる。
赤外線カメラ(手持ち):メリット:カメラで撮影するだけなので現地調査の時間が短い。
デメリット:被写体高さと同じ距離を離れて撮影しないといけない為、遠距離での撮影となり、
小規模な劣化は見つけられない。
赤外線カメラ(ドローン):メリット:カメラ撮影するだけなので現地調査の時間が短い。建物に近づいて撮影ができる。
小規模な劣化も見付けれる。
デメリット:建物に近づくには国家資格の運転免許がいる。モーター音がうるさい。周囲への安全管理が必要。
バッテリーの持ちが悪いので一日中の調査は相当の予備バッテリーが必要。
以上が主な特徴になります。同じ赤外線調査でも手持ちとドローンではメリットデメリットが違います。
手持ちのカメラだとどうしても遠くから撮影すると3cm角の小規模劣化はカメラの画素数の影響で映らないです。当然画素数が高いカメラを使用すれば、データを拡大することで映る劣化部位は多くなりますが、基本的には10cm角以上の劣化でないと映らないと思います。
また、あまり遠くから撮影すると建物からの熱放射と劣化による温度変化が相殺されてしまい、綺麗に映らなくなります。
さらに被写体高さと同じだけ離れて撮影だと撮影角度は45度になりますが、45度とは言え真正面から撮影するドローンに比べて、
角度がついていることにより分析の難易度が高くなります。
逆に赤外線カメラの場合だとどんな高さであっても至近距離・正面から撮影できるので、小規模な劣化も見付けることができます。
このような特色があるので、調査を依頼する場合には各特色を理解した上で発注することが大事です。
例えば他社の調査報告書では、ドローンで撮影しているのに、上から下へ角度をつけて撮影しているものが多数あるのを見たことがあります。
これではせっかくドローンを使っている意味がありません。また角度をつけるなら45度以内にしないといけません。
また撮影だけをカメラ業者に頼んで、分析は素人が行っているケースも非常に多いです。
なぜ素人がやっているかわかるかと言うと、赤外線調査は温度変化を見るので必ず分析の際には温度バーの表示が必要になりますが、
素人はそれすらわかっていないので、単純に撮影した写真を貼り付けただけになっています。これは分析していないと断言できます。
また、赤外線調査は温度変化を事務的に分析していくので、温度変化がある部位全てを「劣化」もしくは「ノイズ(影やシミ)」のどちらかで示さないといけません。
例えば写真では温度変化が出ているのに、「異常なし」と記載されている場合は、要注意です。
写真に写った以上「異常なし」と判断することがそもそも現時点の技術では不可能だからです。
(悪魔の証明と同じで、いない(劣化がない)ことの証明は難しいのです。ましてや温度変化が映っているなら余計に。)
実際に打診して劣化がみつからなかったから、赤外線で温度変化があっても「異常なし」とする調査者も多いですが、これも間違っています。
外壁の劣化部位の「深度」によっては打診して以上なしでも赤外線カメラでは異常が映る場合があるからです。
前述したように打診調査の方が赤外線カメラより精度が高いと勘違いしている調査者だとこのようなミスを犯します。
弊社はドローン及び赤外線診断技術者という国家資格保有者が適切に調査・診断を行います。
もし中高層建物の管理をされている方は一度ご相談ください。